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最高裁判所第三小法廷 昭和25年(さ)1号 判決

主文

原略式命令を破棄する。

本件公訴を棄却する。

理由

検事総長福井盛太非常上告趣意について。

関係記録を調査するに、被告人は、昭和二三年一二月五日午前一一時四〇分頃東京都千代田区神田豊島町一三番地先歩道において、所轄警察署長の許可を受けないで幅三米長さ一〇米の場所を使用し杉材等建築用資材を置き交通の妨害となる行為をしたとの犯罪事実につき、当初昭和二四年三月一一日東京簡易裁判所に対し公訴提起と共に略式命令を請求され、同月一二日同裁判所は右事実につき道路交通取締法違反として、被告人を罰金百円に処する旨の略式命令をなし、この裁判は同年四月五日確定した。ところが、右略式命令がなされた後未だその確定しない前たる同年三月三一日右同一事実につき更に同裁判所に公訴の提起と共に略式命令の請求がなされ、同裁判所は翌四月一日再び道路交通取締法違反として、被告人を罰金二百円に処する旨の略式命令をなし、この裁判は同年五月一二日確定した事実を認めることができる。してみると後の起訴を受けた東京簡易裁判所は、その公訴事実については既に公訴が提起されているのであるから、本来刑訴三三八條三号に則り判決を以て公訴を棄却すべきであったのである。然るにそのことなく更に略式命令をなしたため、同一犯罪事実について二個の略式命令がなされ相前後して確定した結果となったわけである。即ち後になされた原略式命令は明かに違法なものであるから本件非常上告は理由がある。

よって刑訴四五八條一号により原略式命令を破棄し、同法三三八條三号により本件公訴を棄却すべきものとし、主文のとおり判決する。

右は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 長谷川太一郎 裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

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